再会



 「蘭…!」
 天真は大きく目を見開いた。 
 一人で藤姫の邸を出て行ったあかねを追って、将軍塚に訪れた。そこで、彼は待望の、だが最悪の再会を果たすことになった。


 「蘭…。蘭…、本当にお前なんだな」
 衝撃に声をかすれさせながら、天真はただ眼前の少女を見つめる。捜し求めていた妹が、やっと目の前にいる。その喜びは、天真を金縛りにしてしまうほど深かった。
 だが、その喜びは長くは続かなかった。
 「天真くん、妹って…、ランは鬼だよ…?」
 傍らのあかねが、やはり衝撃に震える声で言う。彼女にしてみれば当然の疑問。だが、天真にしてみれば、やはり当然の怒りが湧き上がってくる。
 「何、馬鹿な事を言ってるんだ! あれは俺の妹だ、鬼のはずがないだろう。やっと見つけた…、俺の蘭……」
 ん?
 天真のセリフに微妙に引っ掛かりを覚えて、あかねは首を傾げる。だが、その思考が形になる間もなく、ラン―――蘭がつと足を踏み出した。
 「龍神の神子…、覚悟」
 淡々とした声で告げ、蘭があかねに向かって手をかざす。その手の平から黒い霧のようなものが溢れ出し、同時に地面がぼこぼこと割れ、異形が姿を現した。
 「怨霊!?」
 「さあ怨霊よ、龍神の神子を殺せ。それがお館様の望みだ」
 蘭の言葉と共に、怨霊がいっせいにあかねに襲いかかってくる。
 「きゃあっ!」
 「あかね!」
 天真が咄嗟にあかねを突き飛ばす。怨霊の攻撃は天真の鼻先をかすめ、あかねがいた場所を通り抜けて行った。
 天真は愕然とした表情で蘭を振り返る。
 「蘭、何をするんだ!」
 「邪魔をするな、地の青龍。私の邪魔をするなら、お前も共に葬る」
 「蘭…っ」
 天真の表情が固まる。それほどに蘭の言葉は、彼に混乱をもたらした。
 何故、だ? 何故、蘭がこんな事をする?
 天真の思考は空白状態に陥った。蘭がいなくなってから、ずっと再会の日を信じて捜し続けてきたが、こんな再会は予想外だった。
 たった13で家族の庇護から離れてしまった妹。どこにいるにしろ、蘭は助けを求めているだろうと思っていた。捜し当てれば、この腕の中に飛び込んでくるはずだった。こんな風に拒絶―――ましてや攻撃してくるなど、微塵も考えていなかったのだ。
 「蘭……」
 呆然と立ちすくむ天真に、再び蘭の元に戻った怨霊の放つ瘴気が吹き付けてくる。だが、それがもたらす痛みも苦しみも今の天真には感じられなかった。
 「天真くん! 天真くん、しっかりして。怨霊を倒さないと!」
 起き上がったあかねが天真の側に駆けより、その腕を引く。だが、彼は聞こえた様子もなく、ただ立ち尽くしていた。
 「天真くん!」
 パン、と天真の頬が鳴った。
 はっと目を見開く天真に、あかねは厳しい表情で告げる。
 「しっかりして、天真くん! 私にもよく分からないけど、ランは天真くんの妹なんでしょ? ずっと捜してた大事な家族なんでしょ?」
 「あかね……」
 その言葉に、天真は次第に冷静な思考を取り戻していく。
 「そうだ…、俺は蘭を見つけ出すためにこの世界に残ったんだ。やっと…、蘭を見つけたんだ!」
 一旦、衝撃から立ち直ると、天真の行動は早かった。あかねを背後にかばい、身を低く構えながら、じっと蘭を見つめる。
 「蘭、俺はお前を迎えに来たんだ! 一緒に帰ろう!」
 だが、必死の叫びは蘭には届かない。
 「私があるべき場所はお館様のもと。お前など知らぬ」
 「違う! お前は俺の妹だ! そんな風に、他の男の事なんか口にするな!」
 おや?
 あかねは再び首を傾げた。どうも、さっきから兄妹の会話としては不適切なセリフが交じっている気がする。
 首をひねっているあかねを、天真が険しい顔で振り返った。
 「あかね、力を貸してくれ。この怨霊をやっつけて、蘭のところへ行く!」
 「う、うん、分かった!」
 二人は戦闘態勢に入った。

 

怨霊と戦いますか?

 

 

[戻る]